〈写真:myphutho.vn〉
ベトナム北部フート省フングエン村で毎年旧暦1月に開催される「チョーチャム祭り」は、男女の結びつきを象徴的に表現し、五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する民俗行事である。
中部山間地域に根付く農耕信仰を色濃く残す祭礼として広く知られている。
祭りの中心となるのは、地元のミエウ・チョ(通称ドゥ・ディ祠)で執り行われる「密礼」と呼ばれる儀式である。
旧暦1月12日午前0時、日付が改まる神聖な時刻に開始され、村で選ばれた男女が男性性と女性性を象徴する木製の「ノー・ヌオン」を手に取り、陰陽の調和を体現する所作を行う。
儀式が灯りを落とした暗闇の中で進められる点も大きな特徴である。
この象徴物は赤く塗られた木製品で、豊穣や生命力を体現する存在とされる。儀式は「リン・ティン・ティン・フォック」とも称され、祭りの別名としても用いられている。
同祭りは数百年に及ぶ歴史を有するが、戦乱の影響などにより一時中断を余儀なくされた経緯がある。
その後1993年に復活し、現在では毎年継続的に開催されている。
2017年にはベトナム文化・スポーツ・観光省により国家無形文化遺産に登録され、地域社会の精神的支柱としての価値が公的に認められた。
観光客の来訪も年々増加しているが、祭りの本質は農耕社会の世界観を体現する共同体の祈りにある。
伝統的価値観と現代社会の関心が交錯する中で、本祭礼は地域文化の象徴として受け継がれているのである。





































