ベトナムでは急速な経済発展や都市化が進む一方で、大気汚染、ごみ処理、水質汚染、プラスチックごみ、騒音、気候変動などの環境問題が深刻化しています。
ハノイやホーチミンでは交通量の多さによるPM2.5や排気ガス、都市部ではごみの分別・回収、地方では工場排水や農薬による水質・土壌汚染が課題になっています。
この記事では、2026年4月時点の最新情報をもとに、ベトナムの環境問題の現状、政府の対策、日本との関係、在住者・旅行者ができることをわかりやすく解説します。
結論から言うと、2026年時点のベトナムで特に重要な環境問題は、大気汚染、プラスチックごみ、生活・産業排水、廃棄物処理、気候変動への脆弱性です。
特にハノイではPM2.5の悪化がたびたび問題になっており、2026年には2030年までに年平均PM2.5濃度を2024年比で約20%削減する目標が報じられています。
| 環境問題 | 主な原因 | 生活への影響 |
|---|---|---|
| 大気汚染 | バイク・車の排気ガス、工場、建設、野焼き | 喉の痛み、咳、PM2.5対策、屋外運動への影響 |
| ごみ・プラスチック問題 | 使い捨て容器、分別不足、回収・処理体制の不足 | 街の衛生、河川・海洋汚染、悪臭 |
| 水質汚染 | 生活排水、工場排水、農業排水 | 河川汚染、悪臭、食品・生活衛生への不安 |
| 土壌汚染 | 農薬、廃棄物、工業排出物 | 農産物・地下水への影響 |
| 騒音・都市環境 | 交通量、建設工事、商業活動 | 睡眠、ストレス、生活環境への影響 |
ベトナムでは、経済成長、人口増加、都市化、工業化、消費スタイルの変化によって、環境への負荷が増えています。
以前は「環境問題への規制が追いついていない」と言われることも多くありましたが、近年は環境保護法、廃棄物分別、拡大生産者責任、プラスチック規制など、制度面の整備も進んでいます。
一方で、実際の現場では、分別ルールの浸透、処理施設の不足、違法投棄、交通由来の大気汚染など、まだ課題が残っています。

ベトナムの都市部で最も身近な環境問題のひとつが大気汚染です。主な原因は、バイクや車の排気ガス、建設工事、工場排出、道路の粉じん、季節によっては野焼きや気象条件などです。
特にハノイでは大気汚染が深刻化しやすく、2025年3月にはIQAirの観測でAQI207の「非常に不健康」レベルとなり、世界で最も汚染された都市として報じられた時間帯もありました。
ホーチミンも交通量が多く、幹線道路沿いや工事現場周辺では空気の悪さを感じやすい環境です。
大気汚染が気になる日は、AQIアプリで数値を確認し、屋外運動を控える、マスクを着用する、空気清浄機を使うなどの対策が有効です。

ベトナムの水質汚染は、生活排水、産業排水、農業排水、河川や湖へのごみ投棄などが原因です。
都市部では下水処理インフラの整備が進んでいる一方で、急速な都市化に処理能力が追いついていない地域もあります。
河川や運河では、生活排水やごみの影響で悪臭や水質悪化が問題になることがあります。
工業団地や製造業の発展により、工場排水の管理も重要な課題です。環境基準違反に対する立ち入り検査や罰則は強化されつつありますが、地域によって実効性には差があります。
土壌汚染は、農薬・化学肥料の過剰使用、不適切な廃棄物処理、産業廃棄物の管理不足などによって発生します。
農村部では、農薬容器やビニール袋が適切に回収されず、農地や水路に残ることがあります。
都市部では、生活ごみや建設廃棄物が適切に処理されない場合、土壌や地下水に影響を与える可能性があります。
ベトナムでは農業が重要産業である一方、肥料・農薬・畜産排水の管理が環境課題になっています。
農薬や化学肥料が適切に使われない場合、土壌汚染や水質汚染につながります。
また、畜産排水が未処理のまま流れると、河川や地下水の汚染、悪臭、衛生問題を引き起こすことがあります。

近年、ベトナムで特に注目されているのが、プラスチックごみと廃棄物処理の問題です。
世界銀行は、ベトナムでは年間約310万トンのプラスチック廃棄物が陸上で発生し、その少なくとも10%が水路へ流出していると指摘しています。
改善が進まなければ、2030年までに水路への流出量が2倍以上になる可能性も示されています。
また、ベトナム政府系メディアは、2030年までにプラスチック漏出を43%超、海洋プラスチックごみを75%削減するには、今後5年で約80〜90億米ドルの資金が必要だと報じています。
ベトナムでは、環境保護法に基づき、2025年から家庭や事業者による発生源でのごみ分別が求められています。分別は主に、リサイクル可能ごみ、食品・有機ごみ、その他ごみに分ける方向で進められています。
ただし、実際の運用は地域によって差があります。在住者は、居住しているアパート、コンドミニアム、オフィス、地域の分別ルールに従うことが重要です。
ベトナムでは、使い捨てプラスチックへの規制も強化されています。世界銀行は、ベトナム政府が2026年までにプラスチック袋の生産・輸入禁止、2031年までに多くの使い捨てプラスチック製品を禁止する方針を示していると説明しています。
ハノイでは、2026年1月1日から観光・宿泊施設などで使われる使い捨て歯ブラシ、カミソリ、綿棒、シャワーキャップ、小型アメニティなどを段階的に廃止する計画も報じられています。
ホーチミンやハノイなどの都市部では、交通量の増加により騒音問題も発生しています。バイクや車のクラクション、工事音、商業施設の音響などが生活環境に影響することがあります。
特に幹線道路沿い、工事現場近く、繁華街周辺に住む場合は、騒音や空気環境も物件選びの重要なポイントになります。
森林破壊も、ベトナムの長期的な環境課題のひとつです。農地開発、インフラ整備、違法伐採、過去の戦争被害などが森林環境に影響してきました。
近年は森林保護や植林、自然保護区の管理も進められていますが、開発と保全のバランスは引き続き重要なテーマです。
ベトナムは、気候変動の影響を受けやすい国のひとつです。メコンデルタでは海面上昇、塩害、洪水、地盤沈下などが農業や生活に影響を与えています。
都市部でも、豪雨による浸水、排水能力の不足、ヒートアイランド現象などが課題です。ホーチミンでは雨季の道路冠水が日常的に発生するエリアもあり、環境問題は生活インフラの問題とも直結しています。
ベトナム政府は、環境問題の深刻化を受けて、制度面の整備を進めています。
現在の重要な法制度のひとつが、2020年に制定された環境保護法です。この法律により、環境影響評価、廃棄物管理、ごみ分別、拡大生産者責任などの枠組みが整備されています。
また、ベトナムは2050年までの環境保護国家戦略も進めており、再利用、リサイクル、廃棄物処理、プラスチックごみ削減などを重点分野に位置付けています。
ベトナムでは、製造・輸入事業者に対して、製品や包装の回収・リサイクル責任を求めるEPR制度が導入されています。2024年以降、対象企業のリサイクル義務や報告義務への対応が進んでいます。
これは、企業が商品を販売して終わりではなく、使用後の包装や製品の回収・リサイクルにも責任を持つという考え方です。
ハノイでは、PM2.5の削減に向けた対策が進められています。報道によると、2030年までに年平均PM2.5濃度を2024年比で約20%削減し、40µg/m³未満に下げる目標が示されています。
交通、建設、産業、野焼きなど複数の発生源への対応が必要であり、今後の実行力が問われます。

日本は、ベトナムの環境対策において長年協力を続けています。水質管理、上水道・下水処理、廃棄物管理、大気環境管理、省エネ、気候変動対策などが主な分野です。
日本の環境技術や自治体の経験は、ベトナムの都市環境改善にも活用されています。
特に、ごみ処理、排水処理、大気汚染管理、環境モニタリングの分野では、今後も日本企業や自治体の知見が求められる可能性があります。
環境問題は政府や企業だけの課題ではなく、日常生活の中でもできる対策があります。
都市部では、大気汚染、ごみ問題、騒音、道路冠水が身近です。特にハノイではPM2.5、ホーチミンでは交通量や工事による空気の悪さを感じる人が多いです。
2025年から発生源でのごみ分別が本格化しています。ただし、実際の運用は地域や建物によって異なります。住んでいるアパートやオフィスのルールを確認しましょう。
あります。マイバッグやマイボトルを使う、不要なプラスチックカトラリーを断る、ごみを適切に捨てる、自然観光地でごみを持ち帰るなどが有効です。
ベトナムは経済成長を続ける一方で、大気汚染、水質汚染、ごみ処理、プラスチック問題、気候変動など複数の環境課題を抱えています。
近年は、環境保護法、EPR、ごみ分別、使い捨てプラスチック規制など、制度面の対策が進み始めています。ただし、生活の現場では分別や処理体制がまだ十分でない地域もあり、政府・企業・市民の継続的な取り組みが必要です。
在住者や旅行者も、マイバッグ、マイボトル、ごみ分別、AQI確認など、日常の小さな行動から環境負荷を減らすことができます。