ベトナムで生活したり旅行したりする際、「どんな感染症に気をつければいいの?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、ベトナムでは食べ物・水・蚊・動物・空気感染の5つを意識することが大切です。すべてを過度に怖がる必要はありませんが、基本的な予防と、必要なワクチンの確認をしておくことで、リスクはかなり下げられます。
この記事では、ベトナム在住者・出張者・旅行者向けに、2026年時点で特に知っておきたい感染症をわかりやすく整理して紹介します。
この記事のポイント
- ベトナムで注意したい感染症を種類別に整理
- 優先して確認したいワクチンがわかる
- 都市部と農村部で異なるリスクがわかる
- 発熱・下痢・動物に噛まれたときの対応がわかる
ベトナムの感染症対策は、次の5つに分けて考えると整理しやすいです。
| 分類 |
主な感染症 |
特に注意したい場面 |
| 食べ物・水 |
A型肝炎、旅行者下痢症、腸チフス |
生水、氷、生もの、衛生状態が不明な店 |
| 蚊 |
デング熱、日本脳炎、マラリア |
雨季、農村部、郊外、屋外活動 |
| 動物 |
狂犬病 |
野犬、猫、サル、動物との接触 |
| 空気感染・飛沫感染 |
結核、麻疹、インフルエンザ |
人混み、学校、職場、医療機関 |
| 血液・体液 |
B型肝炎 |
医療行為、性的接触、針刺しなど |
短期旅行ならすべてを同じ強さで警戒する必要はありませんが、食事・蚊・動物の3つは特に実生活で遭遇しやすいポイントです。
ベトナムでは都市部の衛生環境は改善していますが、すべての店が同じ水準ではありません。特に屋台、ローカル食堂、常温保管の料理、生野菜や氷には注意が必要です。
A型肝炎は、汚染された水や食品を口にすることで感染する感染症です。ベトナムでは旅行者向けワクチンとして代表的なものの一つです。
発熱、だるさ、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部不快感、黄疸などが出ることがあります。風邪や胃腸炎と思って見過ごされることもあります。
生水を避け、氷・生もの・十分に加熱されていない料理を控えることが基本です。旅行者や赴任者は、渡航前にワクチン接種を検討する価値が高い感染症です。
接種回数や間隔は使用するワクチンや年齢で異なるため、最新の接種スケジュールは渡航外来や医療機関で個別確認するのが確実です。古い記事にある「現地在庫」前提の情報は変わりやすいため、そのまま信じないようにしましょう。
旅行者下痢症は、旅行中に起こる下痢症の総称です。原因は細菌、ウイルス、寄生虫などさまざまで、アメーバ赤痢と完全に同義ではありません。
下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などが中心です。軽症で治ることもありますが、脱水や高熱を伴う場合は受診が必要です。
生水、氷、生野菜、常温で長く置かれた料理、加熱不十分な肉や魚介類を避けましょう。特に到着直後や体調が落ちているときは、無理にローカルの生ものを試さないのが安全です。
腸チフスも、汚染された食品や水から感染する代表的な感染症です。日本ではまれですが、東南アジアでは旅行医学上よく挙がる病気です。
高熱、腹痛、下痢または便秘、倦怠感などが出ます。潜伏期間があるため、帰国後に症状が出ることもあります。
A型肝炎と同様に、食べ物と水の衛生管理が基本です。小さな町や農村部に行く方、ローカル店での食事が多い方、長期滞在の方は特に注意したい感染症です。
腸チフスワクチンは、渡航外来で相談対象になりやすいワクチンです。必要性は旅行期間、滞在エリア、食事スタイルで変わるため、個別判断が現実的です。
ベトナムでは、飲食以外にも蚊、動物、空気感染、血液・体液などから感染する病気があります。特に、蚊と動物対策は日常生活でも非常に重要です。
B型肝炎は、主に血液や体液を介して感染します。性的接触、医療行為、針刺し事故、入れ墨やピアスなどがリスクになります。
発熱、倦怠感、吐き気、食欲不振、黄疸などが出ることがありますが、初期症状が目立たないこともあります。
不必要な医療処置を避ける、衛生管理が不明な施設での注射や施術を避ける、性的接触では予防策を徹底することが大切です。長期滞在者や赴任者ではワクチン接種の優先度が高めです。
B型肝炎ワクチンは一般的に複数回接種ですが、製剤やスケジュールは医療機関によって異なります。出発まで時間がない場合でも、早めに相談する価値があります。
デング熱は、ウイルスを持つ蚊に刺されることで感染します。ベトナムでは都市部でも注意が必要で、特に雨季や流行年は警戒したい感染症です。
高熱、頭痛、目の奥の痛み、関節痛、筋肉痛、吐き気、発疹などがみられます。重症化すると出血傾向やショックを起こすことがあります。
長袖・長ズボン、虫よけ、室内でも蚊対策を徹底することが基本です。デング熱は昼間に刺す蚊にも注意が必要です。
なお、ワクチンの話題もありますが、旅行者にとってまず優先すべきは蚊に刺されないことです。自己判断でワクチン可否を決めず、必要なら専門医に相談しましょう。
日本脳炎は蚊が媒介する感染症で、主に農村部や豚・水田がある地域への長期滞在でリスクが上がります。短期の都市滞在だけなら優先度は下がりますが、ゼロではありません。
発症すると高熱、頭痛、けいれん、意識障害など重い症状を起こすことがあります。まれではありますが、重症化すると命に関わります。
農村部への長期滞在、屋外活動、キャンプ、空調や網戸のない宿に泊まる予定がある場合は、ワクチンも含めて検討したい感染症です。都市部の短期旅行だけなら一律必須とは言えません。
ベトナムへ移住する方、1か月以上の滞在予定がある方、農村部に繰り返し行く方は検討しやすいワクチンです。
狂犬病は、発症するとほぼ致死的な感染症です。ベトナムでは今も大きな注意点の一つで、犬だけでなく猫やサルなどにも注意が必要です。
潜伏期間のあと、発熱、不安感、けいれん、麻痺、恐水症状などが出ます。発症後は極めて危険です。
野犬や見知らぬ動物に近づかない、エサを与えない、子どもを不用意に触らせないことが基本です。噛まれた・引っかかれたら、すぐに大量の流水と石けんで傷を洗い、速やかに医療機関へ行ってください。
長期滞在、地方滞在、子ども連れ、動物と接する可能性が高い方は、暴露前ワクチンを検討しやすいです。ベトナム国内でも暴露後ワクチンは利用しやすい一方、噛まれた後の受診は絶対に後回しにしないでください。
破傷風は土壌中の菌が傷口から体内に入ることで起こります。ベトナム特有というより、海外生活や旅行全般で見直しておきたい感染症です。
口が開きにくい、筋肉のこわばり、けいれん、飲み込みにくさなどが起こります。重症化すると呼吸障害につながります。
転倒やケガをしたらすぐ洗浄し、汚れた傷は医療機関で相談しましょう。破傷風を含む定期接種の追加接種時期を確認しておくことが大切です。
マラリアは蚊が媒介する感染症ですが、ベトナムではどこでも同じリスクではありません。
発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、だるさなどが中心です。放置すると重症化することがあります。
ホーチミン、ハノイ、ダナン、ニャチャンなど主要都市では通常リスクは低く、一般的な短期滞在なら過度に心配しすぎなくても大丈夫です。一方で、農村部や森林地帯では注意が必要で、行き先によっては予防薬が検討されます。
地方出張、山岳部、国境地帯、長期の地方滞在がある方は、出発前に渡航医療で個別相談しましょう。
結核は空気感染で広がる感染症です。短期旅行で過度に怖がる必要はありませんが、長期滞在者、医療・福祉関係者、換気の悪い環境で過ごす時間が長い方は意識しておきたい病気です。
長引く咳、血痰、微熱、体重減少、寝汗、だるさなどが続くことがあります。
換気、体調管理、長引く咳を放置しないことが大切です。3週間以上咳が続く場合は、単なる風邪と思い込まず受診しましょう。
麻疹は空気感染する非常に感染力の強い病気です。ベトナムでは2025年に流行が問題になっており、特にワクチン未接種・接種不十分の人は注意が必要です。
高熱、咳、鼻水、目の充血、発疹などが現れます。大人でも重くなることがあります。
もっとも重要なのはMMR(麻疹・おたふく風邪・風疹)ワクチンの接種歴確認です。小さな子どもを連れて渡航する場合や、接種歴があいまいな大人は、出発前に母子手帳や予防接種記録を見直しておきましょう。
ベトナム渡航前にまず確認したいのは、次のようなワクチンです。
| 優先度 |
ワクチン |
考え方 |
| 高 |
A型肝炎 |
食事・水のリスクがあるため相談しやすい |
| 高 |
B型肝炎 |
長期滞在者、赴任者、医療機関利用の可能性がある人 |
| 高 |
麻疹(MMR確認) |
接種歴不明なら要確認 |
| 中〜高 |
腸チフス |
ローカル食が多い人、小都市・農村部に行く人 |
| 条件次第 |
日本脳炎 |
農村部・長期滞在・屋外活動が多い人 |
| 条件次第 |
狂犬病 |
子ども連れ、地方滞在、動物接触リスクがある人 |
| 確認推奨 |
破傷風を含む定期接種 |
追加接種時期の確認が大切 |
迷った場合は、「短期の都市滞在なのか」「長期赴任なのか」「地方や農村部に行くのか」で考えると判断しやすくなります。
発熱、強い下痢、脱水、発疹、動物に噛まれた、長引く咳などがある場合は、帰国まで待たずに現地で受診するのが基本です。
ベトナムの都市部には、日系・外資系の私立病院やクリニックがあり、日本語対応や海外旅行保険のキャッシュレス対応をしている施設もあります。
受診前に、保険証券、パスポート、服用中の薬の情報を手元に準備しておくとスムーズです。
感染症の中には、ベトナム滞在中ではなく、帰国後に症状が出るものもあります。特に発熱、下痢、発疹、咳が続く場合は、海外渡航歴を必ず伝えて受診しましょう。
「日本に帰ってきたから大丈夫」と思い込まず、いつ・どこへ行ったか、蚊に刺されたか、動物に噛まれたか、生ものを食べたかを説明できるようにしておくと診断の助けになります。
短期旅行なら、まずは旅行者下痢症、A型肝炎、デング熱、狂犬病を意識すると実用的です。
主要都市だけの滞在なら通常リスクは高くありません。ただし、地方や森林地帯へ行く場合は話が変わるため、行程に応じて判断が必要です。
麻疹の接種歴、狂犬病リスク、蚊対策、食べ物と水の衛生の4点は特に重要です。
ベトナムで気をつけたい感染症は多いですが、やみくもに不安になる必要はありません。
食べ物・水、蚊、動物、空気感染、ワクチン確認の基本を押さえておけば、リスクはかなり下げられます。特にA型肝炎、B型肝炎、腸チフス、麻疹の接種歴確認や、デング熱・狂犬病への備えは、在住者にも旅行者にも重要です。
チェックリスト
- 渡航前にA型肝炎・B型肝炎・MMRの確認をした
- 地方滞在がある場合は腸チフス・日本脳炎・狂犬病も検討した
- 虫よけ、長袖、常備薬を準備した
- 生水・氷・生ものに注意するつもりでいる
- 発熱や動物咬傷時に受診する病院を把握している