<写真:znews.vn>
ベトナムでは娯楽支出が拡大しており、とりわけ映画市場の成長が顕著で、2024年の映画館興行収入は約5兆6000億ドン(約338億5239万円)と過去最高を記録した。
2010年代初頭に約1兆ドン(約60億4507万円)規模であった市場は、この10年余りで5倍以上に拡大した計算となる。
映画鑑賞は単なる個人の娯楽にとどまらず、家族や友人、カップルが時間を共有する社会的な消費行動として定着しつつある。
支出の拡大は映画分野に限られない。ゲーム、音楽配信、動画配信、SNS上の各種コンテンツなど、デジタル娯楽全般への支出も増加している。
ベトナムのゲーム市場は年間約7億ドル(約1113億2800万円)規模とされ、利用者は5000万人を超える。
インターネット普及率は人口の77%以上に達し、1人当たりの利用時間は1日6〜7時間に及ぶ。
娯楽はもはや家計の周辺的項目ではなく、現代の消費生活を構成する重要な分野へと変化した。
この背景には所得水準の上昇がある。
1人当たり所得は4300ドル(約68万3870円)を超え、基礎的需要の充足が進む中で、消費は食住や教育、医療に加え、精神的充足へと向かい始めている。
生活や学業、仕事の負担が増すほど、映画やゲーム、音楽といった娯楽は気分転換や情緒の安定を支える手段として選択されやすい。
さらに、スマートフォンの普及がこうした需要を一層後押ししている。
もっとも、娯楽支出の増加は単なる市場拡大として捉えるだけでは不十分である。
短時間で強い刺激を与えるコンテンツが広がる一方で、伝統芸能や教育性の高い文化活動は観客の獲得において不利な立場に置かれやすい。
娯楽産業が商業性や即時性に偏重すれば、社会の文化的基盤が短期的な消費へと収斂する懸念も生じる。
ベトナムにおいて問われているのは、娯楽にどれだけ支出するかではなく、いかなる娯楽文化を育成するかである。
娯楽産業は経済成長や国の発信力を支える潜在力を持つ一方、持続的な文化的価値を伴わなければ、消費の拡大は一過性の熱狂に終わりかねない。
市場の成長と文化政策の方向性をいかに両立させるかが、今後の重要な論点となる。









































