<写真:khoahocphothong.vn>
ベトナムで肥満が拡大している。医薬品大手ノボ・ノルディスクと調査会社Decision Labが2025年に実施した共同調査によれば、国民の多くは肥満を慢性疾患として認識しているものの、運動不足や不健康な食生活が改善されておらず、予防と治療の妨げとなっている実態が明らかとなった。
調査はハノイ市とホーチミン市、ダナン市、ハイフォン市、カントー市の成人1000人を対象に行われた。回答者の83%は、肥満が脂質異常症や心血管疾患、糖尿病などの深刻な合併症を伴うことを理解しており、72%はがんや不妊症のリスクについても認識していた。
一方で、生活習慣の改善は進んでいない。約3分の2の回答者が1日6時間以上を座って過ごしており、3分の1超が加工食品を頻繁に摂取している。ベトナム人の1日当たりの平均塩分摂取量は8.1g、遊離糖の摂取量は46.5gとされ、いずれも世界保健機関(WHO)の推奨水準を大きく上回っている。加工食品や包装食品の普及は、肥満や糖尿病、心疾患など非感染性疾患の増加につながっている。
育児に関する認識にも課題がある。保護者の55%は「食べ過ぎ」よりも「少食」を心配しており、42%は「ふくよかな体形は健康の証し」であると回答した。こうした意識が、子どもの過体重リスクを早期から高める要因となっている。
身体活動の不足も深刻である。国連人口基金(UNFPA)は、ベトナムを世界でも身体活動量の少ない国の1つと指摘している。ベトナム保健省予防医療局の調査では、成人の30%が運動不足に該当する。若年層の体力や持久力も国際基準と比べて低い水準にある。
報告書「World Obesity Atlas 2025」によれば、ベトナムの肥満率は東南アジアで最も低い水準にあるものの、増加率は域内で最大の38%に達している。肥満治療への備えに関する順位は183カ国中108位であり、医療体制や政策対応の遅れが浮き彫りとなった。
学童の過体重・肥満率は過去10年で8.5%から19%へと倍増し、大都市では26%に達している。国立栄養研究所のチャン・タイン・ズオン所長は、その増加ペースはタイを上回り、先進国水準に接近していると警鐘を鳴らす。肥満は将来の非感染性疾患増大につながる「時限爆弾」であり、国民の健康と労働生産性を損なう要因である。
WHOは肥満を複雑な慢性疾患と位置付け、個人の問題にとどまらない公衆衛生上の課題であると強調している。専門家は、政策、医療体制、食品産業、メディアが連携し、社会的偏見の是正と早期介入を進める必要があると訴えている。
毎年3月4日は、世界肥満連合(WOF)が定める「世界肥満デー」である。肥満問題に対する国際的な注意喚起と具体的な対策の強化が求められている。






























