ベトナムは自然豊かで人々も親切な国ですが、高温多湿な気候や日本とは異なる衛生環境により、いくつか注意すべき感染症があります。
特に旅行者や長期滞在者にとって、蚊が媒介する感染症、水や食べ物から感染する病気、動物に噛まれて感染する病気への正しい知識は重要です。
この記事では、2026年4月時点の情報をもとに、ベトナムで注意したい感染症、症状、感染経路、予防策、ワクチン接種の考え方をわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- ベトナムで注意すべき主な感染症
- 各感染症の症状と感染経路
- 旅行者・在住者が取るべき予防策
- 渡航前に検討したいワクチン
- 体調不良時に早めに受診すべきサイン
結論から言うと、ベトナム滞在で特に注意したいのは、デング熱などの蚊媒介感染症、A型肝炎や腸チフスなどの水・食べ物由来の感染症、狂犬病などの動物由来感染症です。
CDCのベトナム渡航者向け情報でも、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎、狂犬病、腸チフスなどのワクチン検討が案内されており、滞在地域や期間、活動内容によって必要な対策は変わります。
| 感染症 |
主な感染経路 |
主な対策 |
| デング熱 |
蚊 |
虫除け、長袖、蚊に刺されない対策 |
| 狂犬病 |
犬などの動物の咬傷 |
動物に近づかない、噛まれたら即受診 |
| A型肝炎 |
汚染された水・食べ物 |
ワクチン、加熱食、ボトル水 |
| 腸チフス |
汚染された水・食べ物 |
ワクチン、衛生的な飲食 |
| 日本脳炎 |
蚊 |
長期滞在・地方滞在ではワクチン検討 |
| マラリア |
蚊 |
地域により予防薬・虫除けを検討 |
- 媒介:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ
- 症状:高熱、頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛、関節痛、発疹、強い倦怠感
- 流行時期:雨季に増えやすく、南部では特に注意
- 重症化リスク:妊婦、高齢者、基礎疾患がある人、過去にデング熱にかかった人
外務省は、ベトナム全土にデング熱のリスクがあり、蚊が発生しやすい6月〜11月の雨季に流行が見られると案内しています。2022年にはベトナム国内で約37万人が罹患し、151人が死亡したとされています。
予防:DEETやイカリジンを含む虫除け、長袖・長ズボン、蚊の多い場所を避ける、室内で蚊を発生させないことが重要です。
ワクチン:デング熱ワクチン「QDENGA」は、2024年にベトナムで初めて承認されたデング熱ワクチンです。ただし、接種対象や推奨は国・医師の判断により異なるため、自己判断せず医療機関で相談しましょう。
- 感染源:感染した犬、猫、猿、コウモリなど哺乳類の咬傷・唾液
- 症状:発症後はほぼ致死的
- 注意地域:ベトナム全土。特に地方や野犬・放し飼いの犬が多い場所
ベトナムでは狂犬病が残っており、平均で年間75人が死亡し、犬が国内の狂犬病感染の99%を引き起こしています。
予防接種:現在、狂犬病の曝露前接種は従来の3回接種ではなく、2回接種スケジュールが基本とされています。
噛まれた場合:すぐに傷口を15分以上、流水と石けんで洗い、速やかに医療機関を受診してください。事前接種済みでも、曝露後は通常0日・3日の追加接種が必要です。
- 感染経路:汚染された水、食べ物、手指
- 症状:発熱、だるさ、食欲不振、吐き気、腹痛、黄疸
- 注意点:屋台、生もの、氷、生野菜、衛生状態が不明な飲食物
A型肝炎は、旅行者が注意すべき代表的な感染症です。ベトナムへ渡航する未接種の旅行者にはA型肝炎ワクチンが推奨されています。
予防:ワクチン接種に加え、未開封のボトル水、加熱された料理、清潔な飲食店選びが重要です。
- 感染経路:汚染された水や食べ物
- 症状:高熱、頭痛、腹痛、下痢または便秘、倦怠感
- 注意点:地方滞在、ローカル食堂、屋台、生野菜、氷入り飲料
ベトナム渡航者、特に地方滞在や友人・親族宅に滞在する人などは腸チフスワクチンが推奨されています。
予防:生野菜や氷、加熱不十分な料理を避け、信頼できる店を選びましょう。ワクチンを接種していても100%防げるわけではないため、飲食面の注意は必要です。
- 発生地域:主に一部の山岳地帯、森林地域、国境周辺
- 症状:発熱、寒気、頭痛、筋肉痛、倦怠感
- 都市部リスク:ホーチミン、ハノイ、ダナンなど主要都市では一般旅行者のリスクは低め
ベトナムの一部地域ではマラリア予防薬が推奨される場合があり、旅行先が都市部だけか、山岳地帯・森林地域を含むかで対策が変わります。
予防:国境地域、山岳地帯、キャンプ、森林トレッキングに行く場合は、渡航前にトラベルクリニックで予防薬の要否を相談しましょう。
- 感染経路:空気感染
- 症状:2週間以上続く咳、発熱、寝汗、体重減少、倦怠感
- 注意点:長期滞在者、医療・福祉関係者、密閉空間で人と接する機会が多い人
ベトナムは結核の負担が大きい国のひとつです。短期旅行者が過度に心配する必要はありませんが、長期滞在者は咳が長引く場合に早めに受診することが大切です。
予防:密閉・混雑した場所ではマスクを活用し、長引く咳や発熱がある場合は医療機関に相談しましょう。
- 媒介:蚊
- 症状:発熱、頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害
- 注意地域:農村部、水田地帯、養豚地域、長期滞在
ベトナムで1か月以上滞在する人、地方へ頻繁に行く人、屋外活動が多い人には日本脳炎ワクチンを検討してください。
予防:蚊に刺されない対策に加え、長期滞在者や地方滞在者はワクチン接種を医師に相談しましょう。
- 感染経路:血液、体液、性行為、不衛生な医療行為、刺青・ピアスなど
- 症状:倦怠感、発熱、黄疸、肝機能障害。慢性化する場合もあり
- 注意点:長期滞在者、医療行為を受ける可能性がある人
ベトナム渡航者はB型肝炎ワクチンが推奨されています。長期滞在者や現地で医療を受ける可能性がある人は、渡航前に接種歴を確認しましょう。
ベトナムでも、インフルエンザや新型コロナなどの呼吸器感染症は発生します。都市部では人の移動が多く、学校、職場、交通機関、イベント会場などで感染リスクがあります。
予防:手洗い、体調不良時のマスク、混雑時の注意、必要に応じたワクチン接種が基本です。高齢者や基礎疾患がある人は、渡航前に医師へ相談しましょう。
ホーチミンやハノイなどの都市部では、日系クリニックや国際病院があり、英語や日本語で相談しやすい施設もあります。
たとえば、DYMメディカルセンター、ロータスクリニックなどがあります。
ただし、地方では医療体制や薬・ワクチンの在庫が限られる場合があります。地方出張、山岳地帯、長期滞在、子ども連れの場合は、都市部で事前に相談しておくと安心です。
| ワクチン |
検討したい人 |
目安 |
| A型肝炎 |
旅行者・長期滞在者全般 |
渡航前に早めに相談 |
| B型肝炎 |
長期滞在者、医療行為を受ける可能性がある人 |
複数回接種が必要 |
| 狂犬病 |
地方滞在、子ども、動物接触リスクがある人 |
曝露前は現在2回接種が基本 |
| 腸チフス |
地方滞在、ローカル食が多い人 |
渡航前に相談 |
| 日本脳炎 |
1か月以上の滞在、農村部・屋外活動が多い人 |
早めの計画が必要 |
| 破傷風 |
接種歴が不明な人 |
けが対策として確認 |
ワクチンは種類によって複数回接種が必要です。出発直前では間に合わないことがあるため、できれば出発1〜2か月前にはトラベルクリニックや医療機関で相談しましょう。
- 水道水を飲まない
- 氷・生野菜・加熱不十分な料理に注意する
- 食前に手洗い・アルコール消毒をする
- 虫除けを毎日使う
- 長袖・長ズボンで蚊に刺されにくくする
- 野良犬・猫・猿に触らない
- 体調不良時は無理せず早めに受診する
- 海外旅行保険・医療保険に加入しておく
- 高熱が続く
- 強い頭痛や目の奥の痛みがある
- 発疹や出血傾向がある
- 下痢や嘔吐で水分が取れない
- 血便がある
- 動物に噛まれた・引っかかれた
- 2週間以上咳が続く
- 意識がぼんやりする、けいれんがある
特にデング熱が疑われる発熱では、自己判断で解熱鎮痛薬を使わず、医療機関に相談してください。アスピリンやイブプロフェンなどは出血リスクの観点から避けるべき場合があります。
滞在期間や旅程によります。都市部中心の短期旅行でもA型肝炎などは検討対象になります。地方や屋外活動が多い旅程では、追加のワクチンも相談すると安心です。
デング熱には一般旅行者が日常的に服用する予防薬はありません。虫除け、長袖、蚊に刺されない工夫が基本です。
いいえ。事前接種済みでも、噛まれた場合は追加接種が必要です。すぐに傷を洗い、医療機関を受診してください。
ベトナムは魅力あふれる国ですが、日本と比べると気候・衛生環境・動物との距離が異なり、感染症リスクもあります。
大切なのは、過度に怖がることではなく、蚊に刺されない、水と食べ物に注意する、動物に近づかない、必要なワクチンを事前に相談することです。
確認ポイント
- 出発1〜2か月前にワクチンスケジュールを確認する
- 生水・氷・生野菜を避け、加熱調理された食品を選ぶ
- 虫除け対策を徹底する
- 野良犬・猫・猿には触らない
- 発熱や下痢が続く場合は早めに受診する
- 保険加入・緊急連絡先を確認しておく
正しい知識と事前準備があれば、ベトナム滞在はより安心して楽しめます。旅行者も在住者も、自分の滞在スタイルに合った感染症対策を行いましょう。