〈写真:laodong.vn〉
ハノイ市中心部の主要通りに位置する「一等地」物件で、賃借人の撤退が相次ぎ、空室状態が長期化している。
家主が賃料引き下げや支払い条件の緩和を進める中でも、需要回復には至っていない。
ハノイ市のタイハー通り近くで約40㎡の衣料品店舗を借りていた男性は3月、月額3500万ドン(約20万7000円)の店舗を返却した。
賃料は継続すれば3300万ドン(約19万5000円)まで引き下げられる提示であったが、売上の減少と仕入れコストの上昇により赤字が続き、撤退を決めた。
店舗設備は処分し、在庫は自宅に移してオンラインで販売を続けているという。
同様の動きは市内中心部の複数の通りで広がっている。
カウザイ、キムマー、フエ通り、タイハーなどの主要路線では、数カ月にわたり空室のままの物件が目立つ。
キムマーからグエンタイホックにかけては、30店舗以上が閉鎖され、賃貸募集や譲渡の掲示が出されている。
中心部で5年の経験を持つ賃貸仲介業者は、ファッション、飲食(F&B)、化粧品、スパなどの業種で撤退が相次ぎ、市場の低迷が長引いていると指摘する。
都市秩序や歩道占有の取り締まり強化も影響しており、駐車スペースのない小規模物件は立地が良くても競争力を欠くという。
こうした状況を受け、家主側は賃料引き下げや優遇策の拡充を進めている。
キムマー通りでは前年に比べ約10%の値下げが一般的で、最初の3カ月に限り20%引きとする例もある。
バーチュウ通りでは、約50㎡の物件で賃料を15%引き下げて月額6000万ドン(約35万4000円)とし、初週の賃料を免除する条件も提示されている。
不動産情報サイトのデータによると、ハノイ市の戸建て賃貸物件への関心は前年末比で22%減少した。
2025年のピークと比べ、カットリンで37%、キムマーで32%、ブイティスアンで28%、チュンホアで23%、オーチョードゥアで13%と、賃料水準の下落も確認されている。
専門家は、この現象は一時的ではなく、市場構造の変化によるものと指摘する。
従来はブランド認知のため中心部への出店に高額賃料を支払う傾向があったが、現在は電子商取引や大型商業施設の普及により消費行動が変化し、路面店の収益性が低下している。
また、近年の賃料上昇により路面店の優位性は低下し、老朽化した物件はブランド基準に合わせた改装が難しく、入居者を選ぶ傾向も強まっている。
特に飲食やファッション分野では、商業施設への移転やオンライン販売への移行が進行している。
不動産コンサルタントは、当面このセグメントの厳しい状況が続く可能性を指摘し、家主には賃料や支払い条件の柔軟化、区画の分割などの対応を求めている。
一方で賃借人にとっては、賃料が下がった好立地物件を確保する機会でもあり、立地や面積に加え、防火設備や駐車スペースなどの条件を慎重に確認する必要があるとしている。