〈写真:nhipsongkinhdoanh.vn〉
ベトナム南部の工業団地における土地賃料は、この約10年で2倍以上に上昇し、2025年末時点で1㎡当たり約185ドル(約2万8700円)に達した。
不動産サービス会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの報告によると、2016年から2025年にかけて南部の工業用地の一次賃料は約120%上昇し、年平均成長率は9%を超えた。
これはベトナム不動産市場の中でも持続的な上昇が続く分野の1つである。
2016年時点の平均賃料は1㎡当たり約84ドル(約1万3000円)であったが、2019年には約100ドル(約1万5500円)に上昇した。
2020~2021年は感染症拡大や世界的な貿易の混乱の影響で伸びが鈍化し、105~110ドル(約1万6300~1万7100円)程度で推移した。
その後、2022年に約135ドル(約2万900円)、2023年には約178ドル(約2万7600円)へと大きく上昇し、2024~2025年は180ドル(約2万7900円)前後で推移した。
同期間に工業団地の供給面積は80%以上増加したが、価格は上昇基調を維持した。
2026年初も上昇は続き、CBREベトナムによると第1四半期の南部平均賃料は1㎡当たり183ドル(約2万8400円)で、前年同期比4%上昇した。
ホーチミン市では約270ドル(約4万1900円)と地域内で最高水準となっている。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの担当者は、2021~2023年が転換点であったと指摘する。
国際企業が生産拠点の分散を進める中、コスト競争力や安定した投資環境、アジアの供給網における立地優位性からベトナムへの需要が拡大し、賃料上昇を押し上げた。
南部は国内最大の工業集積地であり、完成度の高い生産基盤や豊富な労働力、発達した関連産業ネットワークを有する。
ホーチミン市、ドンナイ省、タイニン省などは港湾や空港、物流拠点との接続性の高さから需要を集めている。
また、高速道路や環状道路、深水港、国際空港といったインフラ投資の進展も賃料上昇の要因となっている。主要交通網に近い工業団地は高い稼働率を維持し、賃料も相対的に高い。
工業用地に加え、完成済みの工場や倉庫の賃料も上昇している。
CBREによると、南部の工場賃料は月額1㎡当たり5.2ドル(約810円)、倉庫は5.07ドル超(約790円超)で、前期比0.5%上昇した。
稼働率は工場が93%、倉庫が80%と高水準を維持している。
CBREの担当者は、電子商取引や小売、ハイテク製造企業を中心に、引き渡し可能な工場や近代的物流倉庫への需要が拡大していると指摘する。
市場は価格競争からインフラや運用能力を重視する段階へ移行しつつある。
専門家は、賃料が高水準に達しているものの、生産拠点移転の流れや電子商取引の拡大に伴う物流需要の増加を背景に、中期的な成長余地は依然としてあるとみている。
一方で、今後は立地やインフラ条件によって価格動向の差が拡大すると予測される。